2019年4月26日金曜日

右腕君と左腕さん

昨年夏の終わりごろから 左腕さんは肩と肘の間に痛みを感じていました。
それが今年大寒の頃から痛みを伴って全く動かなくなりました。
脇の下が体にくっ付いて 腕は樫の木のように固まりました。

「大丈夫僕がやるから」右腕君は頑張りました。 いつも右腕君が食器扉を開けると 左腕さんがコーヒーカップを取ってくれますが・・・右腕君が取り出して両方の作業を右腕君が一人でやります。「ごめんね」左腕さんはすまなさそうにそう言いました。「いいんだよ。」右腕君はいつもそう言います。

3ヶ月が過ぎた頃左腕さんは病院で何度も注射をされ女医さんに 首から肩・肩甲骨・背中を揉まれたり押されたりしました。するとだんだん肩は動くようになり腕全体が脇の下から離れて肘が上がって行きました。

左腕さんが痛そうだと右腕君は夜でも朝でもそ~っと指先までを撫でてあげます。そのうち頑張っていた右腕君も痛みを感じるようになりました。でも右腕君は痛みはあっても動きは滑らかで何の支障もありませんでした。右腕君は10年前ひどい痛みで苦しんだことがあります。雨が降るとその痛みは肩と鎖骨の間にずかずか忍び込んできました その時は左腕さんが頑張ったのでしょう でも右腕君も左腕さんもそれを覚えてはいません。

ある日右腕君が左腕さんの手を撫でてあげながら5本の指を一本一本伸ばしてあげました。しばらくすると今度は左腕さんが右腕君の手をとって指を撫でてあげました。「ほら こんなに気持ちいいのよ」左腕さんは 今自分が右腕君の手を握れ肩に触れられるほど回復したことを強く感じうれしくなりました。左腕さんは右腕君に膏薬を張ってあげたくてもそれが出来なかったのです。そこで病院で棒状の塗り薬をもらって 右腕君の肩にクルクルと塗ってあげました。 「ありがとう」べたべたと薬の塗られた肩を右腕君は満足げに見ました。

「無理しなくていいんだよ暖かくなったら左腕さんも もっと楽になるからね そしたら一緒に腕を上げてまわしてみよう。今は僕だけがこんなふうに腕を回しているけどね。」右腕君んは思いっきり腕を伸ばしてゆっくりとまわして見せました。左腕さんも真似しますが途中で「ひひひひひ」と笑って 下ろすのにも
辛そうに変な風に曲げてにおろしてしまいます。痛いとは決して言いません「ひひひひひ」と笑うだけです。






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